MR2(SW20)は1989年から1999年まで販売されたトヨタのミッドシップカーである。
MR2の名称はMR(ミッドシップ・ランナバウト:小型ミッドシップカー)2シーターの略で、SW20は、3S-Gエンジンの形式記号であるSとフレーム識別記号を表すWに車種シリーズ表示記号の20(2世代目)を組み合わせた形式名である。
MRとはミッドシップ・リアドライブ方式のことで、車の中で一番重たいエンジンを車体中央に配置することで重量バランスがよく、前後が軽いことから慣性モーメントが小さく、回頭性が高いことからスポーツ走行に有利とされる駆動方式。
独特な駆動方式のためF1やフェラーリなどの高級スポーツカーにしか採用されていなかったが、FFのコンポーネントを前後替えて配置することで、比較的安価なミッドシップカーを作ることが可能であり、MR2(SW20)はFFセリカのコンポーネントを使って作られた量産型ミッドシップなのである。

発売当初、2,000ccのターボエンジンを採用したSW20はエンジンパワーに足回りが追いついておらず、ブレーキング加重によりリアがすぐにスピンモードへ移行する危険な車であると酷評を受けた。
しかし世界のトヨタ。2年後のマイナーチェンジでは足周りを全面改良し、アライメント、サスペンションジオメトリーと構成部品を見直し、ステアリング系の変更を行うことにより操縦性と安定性を向上させた、通称2型といわれる改良モデルに発展させたのである。
その主な変更点は、リア後側ロアアームを100mm延長。ビルシュタイン製ショックアブソーバーの採用。ビスカスLSDの採用。タイヤサイズを14インチから15インチに変更。フロントリップスポイラーの大型化。などである。

2型GTのボディサイズは全長4,170mm 全幅1,695mm 全高1,235mm。ホイールベースは2,400mm。トレッドは前1,470mm 後1,450mm。最低地上高は130mm。車両重量は1,290kg(Tバー仕様+20kg)。車両総重量は1,400kg(Tバー仕様+20kg)。最小回転半径は4.9m。燃料消費率10モード走行は10.0km/L。Cd値は0.31。

エクステリア 自分のMR2は通称2型ターボといわれるものでボディーカラーはスーパーブライトイエロー(567)のTバールーフ仕様である。このスーパーブライトイエローは3型でも採用されているがカラーコードが異なり(576)、567はレモンイエロー、576は黄色の違いがある。スーパーブライトイエローをオーダーしたときのディーラーの方のビックリした顔を思い出す。

ボディデザインはリトラクタブルヘッドライトを採用し、リアに向かってボリュームがあるスタイリッシュなデザインである。ストラットサスを採用していることから取り付け位置を下げることができず、せっかくエンジンがないフロントセクションがあまり低くできなかったのが残念。
リアサイドにはミッドシップの証であるエアインテークがあり、フロントからエアインテークまでをスプーンでえぐったような独特なデザインと、リアタイア上部の折り目ラインがハリのあるリアセクションを特徴付けている。
しかし今見ても美しいスタイリングは古くささを感じさせない。

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シートポジションはホイールベースの中央にある
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サイドにはミッドシップの証であるエアインテーク
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リアピラーは内側に入り込むデザインでリアウインドウは垂直
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左右一直線に伸びるリアコンビネーションランプ
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リアスポイラーは上下2段式
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ミッドエンジンの上には排熱用のルーバー
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美しいリアライン ボディに写るリフレクションもきれい
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リトラクタブルヘッドライト
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ステアリングの操舵に応じて照射方向が拡大するステアリング連動式フォグランプ
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フロント トランクルームにはスペアタイアがあるので収納スペースはかなり少ない
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リア トランクルームは意外に深さがあるのでゴルフバックが2個入る
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インテリア
インパネはごちゃごちゃ感がなくスッキリとした落ち着いたデザインなので好きである。メーターは左がタコメーター右がスピードメーターで大きくて見やすい。中央上部にブーストメーターがあるが精度はよくない。
MR2はセンタートンネル内に燃料タンクがあることからセンターコンソールが高く、ここに肘をのせて短いシフトノブを操作するのがMR2のアイディンディティとなっている。

内装については、さすがバブル時代に企画発売された車であり、インパネ、センターコンソール、ドアトリムまで全てがソフトパッドで成形されていて品質感がかなり高い。
シートは部分本革で座面とシートバックの中央がエクセーヌ。左右のサイドサポートとヘッドレストが本革である。着座位置は低く最低地上高130mmと相まって座ったままタバコが消せる。
室内はシートの後ろがエンジンルームなので絶対的なスペースは広くはないのだが、2シーターとしては窮屈な感じはまったくしない。またTバールーフは室内が明るく閉塞感を感じさせないのだ。ただしTバールーフは日差しにより頭頂部が暑くなるので、薄いスモークフィルムを貼り熱と紫外線をカットすることで室内は快適になります。

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高いセンターコンソールで運転席と助手席が仕切られている
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センターコンソールの下は燃料タンク 容量は54L
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メーターは大きく見やすい 中央上部はブーストメーター
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シフトレバーは短くサイドブレーキは垂直に近く引き上げる
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ドアミラーとパワーウインドウ スイッチ
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オートエアコンとプッシュ式コントロールパネルは使いやすい
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リアコンソールボックスは2段式 下段にはCDが10枚収納できる
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シート背後ラゲッジスペース 下はリア ストレージボックスで小物が収納できる
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ハンガーフック
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リアウインドウは小さいが、すぐ後ろにあるので後方視界は広く感じる
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Tバールーフ オリジナルでルーフラインにイエローテープを貼ってます
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薄いスモークフィルムを貼って熱と紫外線をカット
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エンジン
エンジンは2,000ccのターボエンジン3S-GTE型直4DOHC16Vターボ。最高出力は225ps/6,000rpm 最大トルクは31kgm/3,200pm。0-400m 13秒9をマークする動力性能である。
ターボには4気筒分の排気エネルギーを2グループに分流させることで排気干渉がないツインエントリーシステムを採用。タービンホイールには回転慣性モーメントの少ないセラミックを採用したツインエントリーセラミックターボである。最大ブースト圧は0.65kg/cm²。
レッドラインは7,250rpmの高回転型スポーツユニットで、2,500rpmからググッとブーストが立ち上がってからのパワーは強烈。エンジン加重をさせたリア駆動により後ろから押し出されるように加速する。 しかしパワーは6,000rpmで落ち込み高回転域までスカッと伸びきる感じはない。また高回転域でのエンジン音もどちらかといえばガサツなサウンドである。

エンジンの振動はかなり抑えられているが取り付けマウントが非常に柔らかく、アクセルを踏むとエンジンが動いてから遅れて駆動が伝わるのでアクセルに対するダイレクト感は今ひとつ。アクセルのオン/オフに対して常にエンジンが前後に揺すられる感じがある。また、加速時のエンジンの動きによりシフトワイヤーも引っ張られてしまいシフトも入りにくいことがある。
燃費は街乗りで7-8km/L。高速は以外に12km/Lぐらいまで延びたりする。

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ハンドリング
サスペンション形式は4輪マクファーソン・ストラットで2型からはビルシュタイン製ショックアブソーバーが前後に採用され、かなりしっかりとした足回りに改良されている。固めのセッティングでスローペースでは前後左右に揺すられ感が強く、この車は神輿かよ!といわれたものである。

1型の酷評によりかなり安定方向にセッティングが修正されており、純正の足回りはミッドシップにもかかわらずフロントの回頭性がいまひとつで、低速度域で前輪加重をしていない状態でのコーナリングは若干プッシングアンダー傾向にあると思う。しっかりとブレーキングで前輪加重をしないとミッドシップらしいスパッとした回頭性は得られないが、今度はリアヘビーであるためフロントがスパッと入ったと同時にリアが外側へ出ようとしてくる。
MR2はコーナリング後半が一番気をつかう部分で、進入速度とリアの踏ん張り加減によりコーナリングが決定する。まあこのバランスをどうするかがミッドシップを作る難しさであり、そこそこの速度であれば楽しく問題はないが、ある速度を超えてくるとリアの突然のブレイクに気を張っていなければならないのだ。リアサスがダブルウイッシュボーンであれば。。。と誰もが願ったことだろう。

パワーステアリングは油圧ポンプを電気モーターで駆動するやや重ためのパワーステリングで、駐車操作時ではかなりの手応えがあり電子制御により高速走行時にはアシストがカットされるなどフィーリングはよい。しかしステアリングギア比が大きくフロントの反応レスポンスが悪いが、これもミッドシップの悪癖を嫌ってのセッティングと思われる。
また、フロントのキャスターアングルが2°50’と小さいためハンドルの戻りが悪く、意識して戻す操作が必要なことがある。
純正のタイヤサイズは酷評を受けた1型のフロント195/60R14 6JJ リア205/60R14 7JJから2型以降はフロント195/55R15 6JJ リア225/50R15 7JJに変更され、ミッドシップのため前後でタイヤ幅とリム幅が異なる。

ブレーキング
ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクで前輪は2ボッドキャリパー付き。GTには4センターの4輪ABSが標準装備されている。キャリパーについてもミッドシップらしく前後ともに中心側に取り付けられている。
ミッドシップの特徴として独特のブレーキフィーリングがある。MR2ターボは42:58の前後重量配分で、フロントが軽くブレーキングによる前加重により前後バランスが最適化されることで4輪のブレーキ性能を引き出し、車体が沈み込むようなブレーキング姿勢は安心感があり魅力的なものである。
ABSについては作動限界はさほど深くはなく、作動するとガガガガガといいう感じでブレーキペダルに強めのキックバックを感じる。下りのブレーキングで段差があるとABSが作動してしまい、一瞬ブレーキが抜けたような感じがあるのでヒヤっとしたりもする。

MR2は理想的なミッドシップから少しズレたアンバランスな部分があり、限界付近ではかなりピーキーな挙動をみせる車である。しかし強烈なパワーで加速し安定したブレーキング加重によりコーナーをスパッと切り込んでいく。そして加速。
この瞬間がMR2の真骨頂であり操る喜びがある。こいつが止められないから他の車に乗り換えられないんだよねぇ。

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